ボランティアジャーニー
東京2020大会が開催される予定だった2020年の夏に向けて、ボランティアの募集が始まったのは、2018年でした。当初計画では、8万人と設定された募集枠に対して、ボランティア募集の公式サイトに登録された人数は、約26万人だったそうなので、ボランティアの応募が過去最高だったロンドン大会よりも多くの人が興味を持ったことになります。最終的には約20万人の応募があり、その中から書類選考で選ばれた応募者が「説明会」に参加し、面談形式の選考を経て、8万人の元にボランティアとして選ばれたと通知が届いたのは、開催予定の1年前、2019年の夏でした。つまり2.5倍の競争率だったことになります。
私自身は、面談員として選考関わり、約300人以上の応募者と会いました。主に英語圏から応募した外国人の方との面談が多かったのですが、中には会場だった有楽町までマレーシアから1泊2日で来たという方もいらっしゃいました。日本国内では東京以外にもいくつかの主要都市で説明会が開催され、海外からはリモートでの参加も受け付けていましたが、何としても参加したいという応募者はわざわざ東京の説明会場まで足を運び、熱意を訴えていた方が多かったという印象です。
約10分程度の面談中、スポーツイベントでボランティア活動をしたことがある経験者は、自分がなぜオリンピック・パラリンピックで活動したいかという思いや、大会に関わることができるのであれば、何でもやるつもりだ、という熱意を語ってくれた人が多かったのですが、ボランティア活動に馴染みがなく、またオリンピック・パラリンピックのことはあまり知らないけれど、なんとなく面白そうだから応募したという人の中には、自分が何をやるのかというイメージを全く持っていない人や、逆に「表彰式で選手にメダルを手渡したい」というように、ちょっと偏った思いを持った方もいらっしゃいました。印象に残っているのは、2020年の夏に大学生としてボランティア活動ができるように、受験勉強を頑張ります、と言っていた高校生3年生がいたことです。なんと素晴らしいモチベーションなんだと感心し、「ぜ~たい合格して、一緒に活動しようねっ!」と伝えました。とは言え、大会が1年延期になってしまったので、ボランティア活動をしたくても休みがとれなかったり、学生時代に活動しようと考えていた人が卒業してしまったりと、約1万の辞退者がでて、最終的には70,970人の人が活動することになりました。
組織委員会の公式サイトで公表されたデータでは、男性 29,677人、女性 41,289人、日本国籍者 63,878人に対して外国籍 7,098人、年齢別では、10代から10歳刻みで、2,112人、17,354人、8,112人、11,972人、16,815人、11,640人、2,823人、139人、3人(90代!)、オリンピック希望者が51,672人、パラリンピックが24,514人、両方希望者が5,216人でした。 ボランティアとして選ばれた応募者は、この後、共通研修やウェブで受講するe-Learning の受講などで大会の開催意義や活動する上での心構えを学び、約9種類に分けられた役割別の研修、そして配置される活動場所単位で受講する会場別研修を受け、晴れて活動を行うことになります。この期間は約3年にも及ぶことになり、組織委員会は、この工程を「ボランティアジャーニー」と呼んでいました。とても長い旅路ですね。