Tsunashima Blog
この記、なんの記、気になる記

人生に失敗はない。あるとすれば、失敗を恐れて、挑戦しないこと。
だからこのブログは、成功談というよりも、失敗談になるハズ・・・

東京2020オリンピック・パラリンピック物語 戸惑い編05

退職者続出

「1000人の契約職員をレイオフすることになった」と書かれたメールは、人事関係者も把握していなかったようで、ある特定の部署に所属するごく限られた関係者が先走ってしまったのか、あるいは極秘に進めようとしていたにも関わらず情報が漏洩してしまったのか定かではありませんが、メールが流れた2日後に慌てて人事部から全職員に火消しの通知が流れました。

事の真相はともかく、レイオフの噂が広まってしまったことで、人事考課もない組織では一生懸命に頑張っても、給与のベースアップやボーナスはもとより、雇用契約すら保証されないという組織構造を浮き彫りにしてしまい、業務上の指示や方針にまで疑心暗鬼の色が濃くなってしまいました。その結果、もともと存在していた管理職の行政関係者や協賛企業からの出向者と、期間限定で雇用されている職員との間の溝がよりはっきりと広がってしまったのは確かでした。

そしてほどなくして、自然と退職者が出始めました。もともと途中で脱落して辞めていく職員もそれなりにいましたし、やろうと思っていた仕事が大会延期の影響で頓挫してしまったり、大会開催に対する世論の風向きが強まったことで、親族に後ろめたい思いをさせたくないという動機で退職していった同僚もいました。過去に開催されたオリンピックの組織委員会で働いた経験がある外国人職員の中には、東京大会に見切りをつけて、パリ大会の組織委員会に転職したメンバーもいました。

そんな状態になると、組織委員会としては人件費節約のためどうやって契約職員を減らすかという心配よりも、大会の準備に支障がでない範囲で人員をどうやって維持するか、あるいは大会期間中に必要な人員をどうやって確保するかという事の方が重要になってしまったのは皮肉なことでした。

4月中旬、所属長から「現在の期限である2020年9月までの雇用契約が途中で打ち切られる心配はありません」とメールで通達がありましたが、逆に「2020年10月以降は保証されていない」と明言しているようなもので、火に油を注ぐようなものでした。 加えて、IOCと2020大会組織委員会が1年延期した大会開催に伴う「追加費用の削減」の検討を行うと発表したのです。削減対象となる費用に職員の人経費が含まれているかどうかは言及されていませんでしたが、12か月分の契約職員人件費、約40億円がコスト削減の対象に含まれるであろうことは容易に察しがつきました。

2020年4月15日は、当初開催予定の開会式まで100日前となり、本来であれば様々なイベントを開催する計画だったのですが、部署内でささやかなオンライン飲み会が開催されただけでした。

在宅勤務が続いて誰にも相談できず、上司からのケアもなく、さっさと転職活動をしなくちゃと考える同僚が続出したのは無理もない事でした。私自身も、オリンピックやパラリンピックへの思いを胸に、せっかく前職を辞めて転職したにも関わらず、もしかしたら大会そのものに関わる機会が奪われるかもしれないと疑いながら仕事をするほど辛いものはありませんでした。

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